現場の管理者には様々な情報が上がってきます。
その一つ一つを分析し「決断」することは、時間的にも精神的にも、現場管理者への大きな負担になっています。
日々多くの決断をする現場管理者の助けになる考え方の一つに、「ファーストチェス理論」があります。
ソフトバンクグループ株式会社の社長、孫正義氏が実践していることで有名な「ファーストチェス理論」。
ファーストチェス理論には賛否両論がありますが、その特徴を理解して利用することで、決断にかかる時間を大きく減らし精神的な負担も軽減されるのです。
このコラムでは、ファーストチェス理論の特徴と、現場管理に採用する場合に知っておきたいポイントを3つにまとめました。
ファーストチェス理論とは
まず、フェーストチェス理論の概要やメリットを紹介します。
ファーストチェス理論とは何か?
ファーストチェス理論とは、チェスの名人がチェスを行う際に「5秒で考えた打ち手」と「30分考えた打ち手」のうち、86%は同じになるという理論のことです。
孫正義氏も意思決定の際に採用しており、「どんなことでも10秒考えればわかる。10秒考えてもわからない問題は、それ以上考えても無駄だ」と述べています。
要するに、5秒で考えられる結論にあれこれ悩むことをやめることで、時間効率を向上させることがファーストチェス理論の目的です。
レスター大学のEva M. Krockow博士によると、人間は平均して1日に35,000回決断すると言われています。
1回あたりの決断にかける時間を数分ずつでも短縮することができれば、現場管理に悩むあなたの時間にも相当なゆとりができるのではないでしょうか。
ファーストチェス理論のメリット
ファーストチェス理論のメリットは、大きく以下の4つが挙げられます。
- 決断にかける時間の短縮
- 一つ一つの決断にかかる負荷と精神的な負担の軽減
- 即決すべき判断と時間をかけるべき大事な判断を区別することで、大事な判断に集中して資源投資が可能
- タイミングを逃すことなく決断が可能
ファーストチェス理論が賛否両論の理由
メリットのあるファーストチェス理論には、なぜ賛否両論が存在するのでしょうか。
実際にインターネットで検索してみると、「ファーストチェス理論は嘘?」といった情報がいくつか見られます。
確かに、ファーストチェス理論の一部だけを捉えて、何も考えずに決断する人は、「何も考えていないだけ」なので失敗することも多いでしょう。
ファーストチェス理論が嘘だと言われている根拠は次の3つが挙げられます。
- ファーストチェス理論の実験対象は、「名人」であることが大前提である
- 「86%は同じ結果になる」ということは、「14%は異なる結果になる」ため、実際の勝負では、その14%が勝負手であることが多い
- 論文の出典が公開されていないため、その実証が正しいかどうかわからない
インターネット上では出典を見つけることはできなかったため、理論自体の正しさを証明することができません。ファーストチェス理論は口づてで伝わったとも言われています。
しかし、チェスの名人のように日々何度も経験してきたことは、5秒で考えた決断と、30分の決断が同じということは多々あります。
例えば、何度も通ってきた通勤通学の経路。どの道を選ぶのが最短かということは5秒でも30分でも同じ結論になることが多いと思います。
理論を絶対に正しいと言うつもりはありませんが、口づてに伝わってきたことを考えると一概にすべてが嘘とも言えません。
成功者の思考法から決断の秘訣を取り入れ、現場管理に生かしていただければ幸いです。
現場管理に応用する際、知っておきたい3つのポイント
ではファーストチェス理論を現場管理に取り入れる際には、どのような注意点があるのでしょうか。そのポイントを3点にまとめてお伝えします。
① ファーストチェス理論に当てはめてよい案件か否かを把握する
まずはファーストチェス理論に適応してよい案件が否かを判断する必要があります。
チェスの名人でも14%は異なる結論が出るように、中には「慎重に考えるべき」判断があります。
ファーストチェス理論を適用していい場合は、失敗しても取り返せる決断の場合です。
高額の投資や、人の人生に関わる重要な決定は、慎重な判断が必要と言えます。
② 「名人」になるためのPDCAを回す
ファーストチェス理論が適用できる場合は、チェスのようにその分野であなたが「名人」になっている場合だけです。
チェス名人は厳しいルールの中で、高度な仮説と検証を繰り返し膨大なデータを蓄積しているため「5秒」で決断できるようになります。
現場管理で適用する場合は、軽微だけれども経験が少ない事柄の判断が求められる場合もあります。
もっとも効率的な学習方法は、経験を重ねることです。
決断の結果をPDCAサイクルに乗せて、検証し続けていくことが学習であり、「名人」に近づく秘訣です。
その際に気を付けるべきは、「失敗だけを反省材料にしない」ということです。
人は失敗した際は、次に同じことを繰り返したくないため反省することが多いですが、同様に成功も検証することでPDCAサイクルの質が向上します。
元西武監督で常勝チームを作り上げた監督である森祇晶氏は、自身の著書『「勝ち続ける」ために何が必要か』(森祇晶、講談社、1995年4月)の中で「勝ちゲームにこそ反省を求める」ことが重要であると述べています。
質の高い反省を繰り返し、名人に近づく努力を重ねていきましょう。
③ 「後悔しない」ことが最重要
すべてを即決することはできないので、慎重に判断すると決めた場合は「後悔しない」ことを最重要に考えましょう。
ファーストチェス理論でつくり出した時間で、慎重に判断すると決めたものには徹底的に時間を使いましょう。
しかし実際には、成功の決断もあれば、失敗の決断をしてしまう場合もあります。
重要なことは、情報収集や分析など事前にできることを可能な限り実施することです。
「あれをやっておけば」という後悔が、後で一番重くのしかかってきます。
リーダーの仕事は「決断」することです。
失敗しても、やれることはやった。ダメだったら取り返そうと思えるだけの事前の準備が、きっとあなたの背中を押してくれます。
仕事に活かす知識を効率よく得る方法
今回紹介したような仕事をする上での悩みの解消、さらに仕事に活かせる知識を体系的に効率よく得るためには、資格試験向けの教材を活用するのが効果的です。
私は、中小企業診断士という国家資格の勉強を始めたことで、経験で何となく理解していた情報の歴史や理論を把握することができ、選択肢を広げることができました。
社内での評価も高まり、予定より1年早く昇格に繋がり、中小企業診断士の一部の内容を講座形式で社内教育にした結果、チームメンバーの能力も高まっています。
実際に試験を受けない場合にはあまり費用をかけられないかもしれませんが、私が購入した診断士ゼミナールは5万円程度で受講が可能です。
少し高いなと感じるかもしれませんが、社内での評価が高まることで仕事がしやすくなり、金銭面でも1年早く昇格したり、賞与の査定が1段階高くなれば十分元が取れるのではないでしょうか?
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まとめ
1日に35,000回も行っている「決断」の負荷を小さくする効果が期待される「ファーストチェス理論」。
決断にかかる時間や精神的負荷を小さくし、決断の成功確率を上げる効果が期待されます。
しかし、賛否両論もある理論です。
現場管理に応用する際は、以下の3点を意識するとよいでしょう。
- 当てはめるべき判断の選別すること
- 名人に近づく努力を日々繰り返すこと
- 後悔しないことを最重要と考えること
3点を意識しながら上手にファーストチェス理論を応用し、現場管理を円滑にしていきましょう。
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