スコープマネジメントとは/プロジェクトを成功に導く7つのポイント

中小企業診断士とマネジメント

マネージャーやプロジェクトリーダーの初心者にとって、プロジェクトを率いて期限内に満足する成果をあげるのは難しいものです。

新規プロジェクトの成功率は20〜30%ともいわれるように、そもそもプロジェクトの成功は難易度が高いため、成功確率を高めるために強力なツールが、スコープマネジメントです。

この記事を読むことで、次のような疑問や悩みを解消することができます。

  • スコープマネジメントについて知りたい
  • スコープマネジメントの使い方がわからない
  • プロジェクトを進めるにあたって、納期や品質を守れるか心配

また、記事後半では、成功裏にプロジェクトを進めるために役立つポイントを、7つ紹介しました。

ぜひ最後まで読んで、日々の実践に役立ててください。

スコープマネジメントとは何か

プロジェクトマネジメントに関する世界標準の参考書であるPMBOK(Project Management Body of Knowledgeーピンボックと呼びます)の定義では、スコープマネジメントとは、「プロジェクトを成功のうちに完了するために必要な全ての作業を含め、必要な作業のみを含めることを確実にするためのプロセスと活動」とあります。

つまり、スコープマネジメントは、プロジェクトを成功させるために必要なことを過不足なく拾いあげる手法のことです。

なお、スコープマネジメントの「スコープ」とは、範囲を意味しており、「マネジメント」は管理を示しています。

スコープマネジメントは、大きく2種類に分けられます。

  1. 成果物を管理するプロダクトスコープ
  2. 作業を管理するプロジェクトスコープ

スコープマネジメントを使ったプロジェクトでは、両方とも用いるのが一般的です。

成果物を管理するプロダクトスコープ

「プロジェクトによって何をつくるのか」を定義するプロセスをプロダクトスコープといいます。

プロダクトスコープで決める具体的な項目としては、最終成果物、過程でつくられるもの、成果物の機能などです。

プロダクトスコープを進める際に大切なことは、成果物の定義をできるだけ具体的にすることです。

プロジェクトのゴールである最終成果物の定義に曖昧な部分があれば、チームメンバー個々がもつ最終成果物のイメージに相違が生まれます。

チームメンバーで最終成果物のイメージを共有できていないことは、プロジェクトの進行にとって重大なリスクとなるでしょう。

作業を管理するプロジェクトスコープ

「最終成果物を生み出すために、プロジェクトで何をどこまで行うのかを定義するプロセス」のことを、プロジェクトスコープといいます。

プロジェクトスコープで定義する具体的な項目は、作業範囲、使えるリソース(予算や人員、期限、)タイムライン、その他成功のために必要な条件などです。

プロジェクトスコープ記述書をもとに作業計画書であるWBSがつくられますので、必要な事項を漏れなく決めることが求められます。

スコープマネジメントの目的とメリット

スコープマネジメントの目的は、プロジェクトに必要なものを過不足なく最終成果物に落としこむことです。

プロジェクトに何が必要かが明確になるので、スコープマネジメントの導入によりプロジェクトの成功率向上が期待できます。

プロジェクトを成功させるために必要なものが何か、曖昧なままプロジェクトを進めてしまうと、追加作業が発生したり、余計な仕事がスケジュールに組み込まれたりして、ムダが発生します。

スコープマネジメントにより必要な項目を過不足なく明確にすることで、ムダを無くし、効率的にプロジェクトを進められるため、期限や品質も担保され、プロジェクトを成功させられる可能性を高められるでしょう。

スコープマネジメントの進め方

スコープマネジメントの工程は、以下の6つです。

  1. 計画をたてる
  2. ステークホルダーの要望を集める
  3. スコープを定義する
  4. WBSで具体的な工程をつくる
  5. 決めたスコープの妥当性をチェックする
  6. スコープを管理する

1.計画をたてる

始めに、どのようにプロジェクトを進めるかの大枠を決めます。

プロジェクトを始めるまえに、プロジェクトチームの方針やルールを大まかに決めておくということです。具体的には、いつまでにステークホルダーの要望を集めて、いつまでにスコープを定義するのか、スコープの変更はどのような手続きを経て行うことにするのか、などを決めておきます。

もしスコープを定義する期限を決めておかないと、いつまでも修正依頼が入ってきてしまうため、最終成果物を期限までに納品できなくなりがちです。

あらかじめ計画をたてることで、後々スムーズに物事がすすみ、結果的に時間短縮になります。

2.ステークホルダーの要望を集める

2つ目の工程では、顧客や利害関係者の要望を集めます。

ここで収集した情報が、最終成果物を設計するために重要なため、要望は抜け漏れなく集めることが大切です。

もし要望に抜け漏れがあると、いざ完成間近になってから「こんなはずではなかった」「私はきいていない」などのクレームの原因となってしまいます。

抜け漏れを防ぐには、あらかじめステークホルダーは誰なのかをリストアップしておくと確認し忘れを防げるでしょう。

3.スコープを定義する

ステークホルダーの要望を集めたら、次にプロダクトスコープとプロジェクトスコープを決めます。

要するに、ステークホルダーから得た要望をもとに、最終成果物をどのようなものにするのか、そのために何をするのかを具体化していくタスクです。

スコープは、できるだけ詳細な部分まで定義しておくと、チームメンバー間で認識の齟齬が生まれないので、無用なトラブルを回避できます。

4.WBSで具体的な工程をつくる

WBSとは、プロジェクトで必要な作業(Work)を分解(Breakdown)した構成図(Stracture)のことです。プロジェクト全体で必要な工程を小さく分解して、作業計画書に落とし込んだものをさします。

WBSをつくっておくと、作業の進捗状況が一目でわかるため、作業進捗を容易に管理することが可能です。

また、現在の進捗状況や、受けた場合の影響度が、WBSから読み取れるため、新規の要望や変更を受けるか否かの判断にWBSが役立ちます。

WBS作成のポイントは、工程の過不足をなくすことです。

チームメンバーの作業はWBSに従ってすすめられるため、WBS上の過不足はそのままプロジェクトの、ムリ、ムダ、ムラにつながります。

5.決めたスコープの妥当性をチェックする

最終成果物が、ステークホルダーに問題なく受け入れられるかをチェックします。

いざつくってみたら顧客の要望とずれていたという事態を無くすために、事前にチェックが必要です。

6.スコープを管理する

WBSをもとにプロジェクトの進捗管理をします。

行うことは、大きく以下2つのタスクです。

  1. 計画が順調にすすんでいるかどうかをチェックする。
  2. 新規の要望や変更要求に対応する。

特に新しいプロジェクトでは、計画段階では無かった新規の要望や、変更の要求が、後になってから入ってくることが多々あります。

新規の要望を受けるのかどうかについては、WBSで現段階の進捗状況を把握していないと判断できませんので、スコープを管理できているかどうかが問われるところでしょう。

スコープマネジメントの進め方の例

スコープマネジメントの進め方を、家族に提供するカレーづくりで解説します。

1.計画をたてる

いつまでに家族にカレーに対する要望を聞くのか、いつまでにカレーの完成形を定義するのか、情報共有の仕方などを決めます。

2.ステークホルダーの要望を集める

今回は家族がステークホルダーになるので、家族に要望を聞きます。

どんなカレーがいいのか、カレーの量は、いつ頃出してほしいのか、予算は、家族によっては利害対立があるかもしれませんので要望の優先順位も把握が必要です。

例えば子どもと父とで、どんな肉をつかうか意見がわかれた場合、何を優先するかで利害調整をはかります。

今回は優先すべきは予算だとしましょう。

その結果、材料として使う肉は今回は安い鶏肉を使用することになります。

また、最終決定者を決めておくとスムーズです。

最終決定者が予算を握っている母だとしたら、母にゆだねる選択ができます。

3.スコープを定義する。

要望をもとに、最終的に作るカレーを決定します。

ポイントは過不足なく要望を満たすことです。要望を満たさないのは問題ですが、要望を上回るものを定義するのも、不必要にリソースを使うだけなので、避けた方がいいでしょう。

※実際には、期待以上のカレーを作った方が喜ばれますが、今回はスコープマネジメントの解説なので、要望に過不足なく作ることを優先します。

4.WBSで具体的な工程をつくる

スコープを定義したら、WBSで具体的な作業工程を作ります。ここでつくられた作業工程表に従って、実際にカレーが作られるため、抜け漏れのないようにしましょう。

また、期限に間に合うように、無理のないタイムスケジュールを組みましょう。

5.決めたスコープの妥当性をチェックする

どんなカレーを作るか決定したら、家族に承認を得ます。

後々トラブルをおこさないためにも、全員から承認を得ておきましょう。

6.スコープを管理する

実際にカレー作りに入ります。食材を買いにいったり、キッチンで仕込みをしたり、このあたりは作業工程表に従って進めます。

なお、プロジェクトは計画どおりいかないことも多いです。

たとえばスーパーに目当ての肉が売ってない場合は、購入対象やスケジュールの調整が必要になります。

近くの店で代替品を買うとか、安い肉が売ってないので高めの肉にして、その代わり量を減らす、などいくつかある選択肢の中から、優先順位にもとづいて変更をします。

プロジェクトを成功に導くためにおさえておきたい7つのポイント

プロジェクトを成功に導くためには、次の7つのポイントを押さえることが効果的です。

  1. ステークホルダー全員から合意をとる
  2. スコープを常に最新の状態に更新しておく
  3. 要望をどこまで受けることができるのかの範囲を把握する
  4. ステークホルダーの要望に優先順位をつける
  5. 顧客の要求をうのみにしない
  6. スコープを可視化する
  7. スコープを簡単に変更しない

1.ステークホルダー全員から合意をとる

要望をもとに最終成果物を定義する際、ステークホルダー全員の合意をとった上で作業を進めることが重要です。

もしステークホルダー全員から合意をとれていない場合、後になってから、プロジェクトを進めることに反対されたり、必要な協力が得られなくなったりする恐れがあります。

2.スコープを常に最新の状態に更新しておく

計画を途中で変更したり、修正したりすることはよくありますが、変更内容に基づいて計画をすぐに更新しておくと、最新の状況を全員が共有できるため、チームメンバー間の齟齬が生まれません。

スコープが更新されていないと、古い情報に従って作業をすすめてしまったり、連携ミスが発生したりといったトラブルの原因になります。

3.要望をどこまで受けることができるのかの範囲を把握する

どんなプロジェクトも、リソースと時間の制約があるので、要望を無尽蔵に受けるわけにいきません。

要望の受けすぎを防ぐため、リソースと期限の制約の中で、どこまで要望を受けることができるのかを把握しておきましょう。

要望を受けられる範囲を把握しておくことで、プロジェクトを進める中で発生するスコープクリープ(時間の経過とともに環境が変わることで新規の要望が追加されたり、要望がより大きくなること)への対応もしやすくなります。

4.ステークホルダーの要望に優先順位をつける

要求を受ける場合の基準として大切なことは、要求の内容が、今回のプロジェクトの目的に合致しているかどうかです。

優先順位の高い項目ほど、プロジェクトの目的に合致しているはずなので、あらかじめステークホルダーと優先順位を決めて共有しておくと、より早く的確に、要求を受けるかどうかの判断ができます。

また、ステークホルダーによって利害が対立する場合の利害調整も、優先順位を決めておくことで行いやすくなるでしょう。

5.顧客の要求をうのみにしない

顧客の要求をそのままうのみにしてしまうと、顧客の真の要求を満たせない場合があります。

顧客が実際に話すことが、必ずしも本当に求めていることとは限らないからです。

顧客の真の要望をつかむために大切なことは、顧客が本当に求めていることは何かを意識しながら丁寧にヒアリングすることです。

中には、実は無くても成果物の質に影響はないにも関わらず、好みの問題で要求として出されているケースもあります。

顧客の真の要望を見極めるためにも丁寧に相手の真意を聞いていきましょう。

6.スコープを可視化する

スコープを可視化することで、ステークホルダーとの情報共有ができるので、スコープクリープに対応しやすくなります。

例えば、顧客が要求を追加したくなっても、可視化されたスコープを顧客と共有することで顧客も自分の要求がプロジェクトへ与える影響の大きさがわかります。

新規要求がプロジェクトに与える大きさについて、顧客と認識を共有できれば、プロジェクトマネージャー側が交渉しやすくなり、重大な変更をさけられるでしょう。

7.スコープを簡単に変更しない

スコープを変更することのリスクが大きいため、スコープは簡単に変更してはいけません。

例えば、スコープを広げるとします。スコープを広げると期限を延ばすか、リソースを増やすことが必要になります。

ところが期限を延ばすこともリソースを増やすことも簡単にはできませんので、計画がはたんする恐れが出てきてしまいます。

このように、いったん決めたスコープをプロジェクト途中で広げるのは得策ではないことが多いので、やむを得ない場合は除き、簡単には変更しないようにしましょう。

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まとめ

本記事で解説してきたことをまとめます。

  • スコープマネジメントとは、プロジェクトを成功させるために必要なことを過不足なく拾いあげる手法のことです。
  • スコープマネジメントを使うと、ステークホルダーの要求を過不足なく抽出し、確実に完成まで持っていけるので、ステークホルダーの希望を満たす成果物を、確実に生み出せることができます。
  • スコープマネジメントは6つの工程ですすめていきます。
  • プロジェクトを進めていくうえで大切な7つのポイントを使えば、スコープマネジメントをスムーズに進めることができるのでプロジェクトの成功率が更にあがります。

プロジェクトは、リソースを最大限に活かしながら期限内に要求される品質をアウトプットすることを求められます。スコープマネジメントは、このプロジェクトに必要な3要素(リソース・期限・品質)全てを管理し、成功に導く手法です。

もしプロジェクトを進めるうえで、リソース、期限、品質のどれかで困ることが多いなら、スコープマネジメントを導入してみてください。

リソース、期限、品質それぞれをしっかり管理できるので、あらゆる制約を守りつつ、その中で最善の成果物をアウトプットできるでしょう。

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